質問要旨
1. 城山の土砂災害について
2. 政策方針変更時の情報共有について
3. 稼ぐ地域づくりについて
4. 松山市駅前広場の整備について
5. ブランド戦略について
6. SNSでの情報発信について
1. 城山の土砂災害について
・ 1-1. 本市の管理に瑕疵があったとは言えないと判断した際の、意思決定プロセスの妥当性を問う。
・ 1-2. この判断の前提として、本市が管理体制そのものを検証していない点の妥当性を問う。
・ 1-3. 国家賠償法において重要な予見可能性について、これまでの経緯や知見を踏まえた上で、本市が予測不能だったと判断した根拠と、その妥当性を問う。
・ 1-4. 発災後からこれまでの本市の住民対応が、本当に寄り添ったものであったと認識しているのかを問う。また、今後さらに寄り添った対応が必要と考えるが、その必要性について本市の所見を問う。
1-1. 本市の管理に瑕疵があったとは言えないと判断した際の、意思決定プロセスの妥当性を問う。
[質問全文]
本市で発生した城山土砂災害について質問します。
もうまもなく発災から1年。
城山の崩落により尊い命を落とされた3名の方の1周忌でもあります。
改めてここに心からの哀悼の意を表します。
また、この質問は発災当時から我が会派は繰り返し質問させていただき、臨時議会も併せて5度目となります。
理事者の皆様におかれましては、行政を通じて市民の命を預かる者の矜持に照らして、一点の曇りもない事実に基づくご答弁をお願いします。
さて、本市が松山市自身に「管理瑕疵責任なし」と判断した際の、意思決定プロセスの妥当性について、強い疑念があり質問させていただきます。
市の管理する施設、いわゆる営造物が原因で3名の方が亡くなった今回の事故は、国家賠償法にも関わる重大な事案です。
市は自らの管理瑕疵責任について「瑕疵なし」、すなわち「責任なし」と結論づけました。
私は3月議会において、こうした判断は、市や県から独立した、複数人からなる第三者委員会によって調査されるべきではないかと質問しました。
これに対して市は次のように答弁されました。
引用しますと、「専門家にご意見を伺ったところ、国・県・市と学識経験者からなる検討委員会が適切に調査や検討を行っており、これ以上の追加の調査や検討は難しいとのご意見をいただきました。
また、道路の設計や施工、城山の管理に関しては、その分野の専門家にご意見を伺い、市として妥当性を確認するものとしたため、改めて、第三者委員会を設置し検討する必要性がないと判断しました。」との内容でした。
分かりやすく言い換えますと、
1点目は「県の技術検討委員会が調査したから、追加調査は不要」。
2点目は「緊急車両用道路については専門家にヒアリングし、管理に瑕疵なしと判断した」。
よって「第三者による再調査は必要ない」というのが、市の主張です。
しかし、この説明には重大な問題があります。
まず、県の技術検討委員会を、市は「これ以上の調査や検討は難しい」とする根拠として挙げられていますが、そもそもこの委員会は「松山市の管理瑕疵の有無」を検証対象としておらず、県も記者会見等でその旨を明言しています。
県はむしろ、松山市自身が独自に管理責任を調査すべきだと明確に要請しています。
ですから、どのように切り取っても、市が管理責任を否定する根拠として県の技術検討委員会を引き合いに出すのは、そもそも成り立たないのです。
だからこそ市も答弁の2点目のとおり、専門家にヒアリングした内容を管理瑕疵なしと判断した根拠としているのです。
そうなると、この専門家とのやり取りの内容が重要になってきますが、なんと驚くべきことに、このヒアリングの内容は市のホームページには一切公表されておらず、市民どころか、議員である私でさえ、情報公開請求をしなければ入手できない状態でした。
世間の注目を集め、市の説明責任を果たす姿勢が強くが求められる事案において、なぜ情報がブラックボックスになっているのか、このプロセスに強い不信感を拭えません。
情報公開請求により入手した資料を確認したところ、実際に行われたヒアリングは、今年1月28日から2月20日にかけての全5回、すべて合わせても、合計6時間45分間のヒアリングであり、その内容はわずか6ページのA4用紙ににまとめられていました。
しかも、対応した専門家は1名のみです。
一方、県の技術検討委員会は、実に半年もの時間と複数の専門家が現地調査をもとに膨大な資料にまとめて、丁寧に検証結果を報告しています。
実に185日間、委員会の報告だけでも合計10時間50分を費やし、提出された資料はホームページで公開され、そこで確認できるだけでも24種582ページに及びます。
県の技術検討委員会は災害の発災メカニズムの解明、一点に絞り込んだ調査で、それでも、半年を要したのに、一方で、様々な観点から調査が必要な管理瑕疵責任の判断根拠の調査に1人の専門家にヒアリングで期間は1か月足らず。
6ページの資料。調査期間は技術検討委員会の6分の1、報告資料の分量にいたっては約100分の1という規模です。このようなプロセスをもって「市に管理瑕疵なし」と判断したことに、市民の誰が納得できるのでしょうか。
市が今回ヒアリングした専門家は土木工学の有識者です。
しかし、営造物の管理に瑕疵があったかどうか。その責任を判断するということは、当該施設の安全性について、あらゆる角度から徹底的に検証する必要があり、土木工学の領域だけでは事足りません。
城山は単なる構造物ではありません。
今回のような山そのもの、そして緊急車両用道路を含む付帯工作物の安全性を調査するには、地質学、防災工学、インフラ維持管理学、森林学、都市計画、さらには史跡保全の観点からの考古学的知見など、物理的・地理的な観点だけでも多様な専門性が求められます。
加えて、行政の体制や管理手法の妥当性を問う行政学、国家賠償法との関連を評価する法学といった文系分野の知見も不可欠です。
検証に必要な知見を有する専門家を候補に上げれば枚挙に暇がありません。
多分野の専門家の総力をもって検証されるべき内容であるにもかかわらず、本市は「土木」の視点だけに絞り込んだ挙句、それも専門家1名の意見だけで、「管理瑕疵なし」との結論を導きました。
なぜこのように偏った調査が行われたのか――その背景には、松山市に「営造物の管理をどう検証するか」「事故が起きたときにどう調査を進めるか」といった、明確なルールや方針がなかったことがあるのではないでしょうか。
そこで私は、このような事案の際に「そもそもあるべき調査の姿」を考えるうえで、私はある提言をご紹介したいと思います。
それは、日本学術会議が平成17年に発表した「事故調査体制のあり方に関する提言」です。
この提言は、交通事故に限らず広く事故調査体制のあるべき姿を提言しており、都市災害・自然災害も範疇に含めて提言しています。
この中で、事故調査機関の在り方について以下のとおり述べられています。
「調査機関自体に完全な専門性を持たせるのではなく、独立行政法人等を支援機関として活用しつつ、学協会、専門メーカー、運用機関等の専門家を公式な協力者(=パーティ)として調査に参加させるべきである」。
この、いわゆる「パーティ・システム」は、アメリカの国家運輸安全委員会でも採用されている国際的な事故調査手法であり、あらゆる知見を動員し、調査の透明性と精度を高めるための仕組みです。
今回のような災害においても、本来であれば地質や土木に限らず、行政学、法学などの観点を持つ人材や民間の知見をも活かし、広い視点で調査すべきだったと考えられます。
それを裏付けるように、県の技術検討委員会も、防災、地盤、地質など、複数分野の専門家によって構成されており、県においても、国内の提言においても、国際的な視点においても、複数の視点での調査が「常識」であることは明らかです。
唯一、土木の専門家1名による意見のみで、「管理瑕疵なし」と結論づけていいと考えているのは松山市だけなのです。
さらに先の提言書には、「調査機関には広い判断力を持つ人材、さらにはリーガルマインドを持つ法律家も含まれることが望ましい」も記されています。
この事故調査の提言の観点から、市の対応を訝しんでしまうのは、管理瑕疵責任を検討するのに国家賠償法という法的論点を含む以上、行政学や法律学の専門家が調査過程にいらっしゃらないことです。
県の技術検討委員会は発災のメカニズムを調査することに目的が絞り込まれているため、法律の専門家が立ち入る余地は少ないと理解できますが、市が調査の対象とする管理瑕疵の有無の検証範囲には、明確に法の射程に入ります。
それにもかかわらず、法律や行政の観点からの検証が一切なされていない今回のプロセスは、管理瑕疵なしの「結論ありき」で、それを導くことのできる学術分野の専門家にのみヒアリングすることで、市に都合の良い結論を導き出したかったのではないか?と疑わざるを得ません。
市の管理下で命が失われた――この事実に、ここにいる私たち全員、真正面から向き合う責任があります。
それでもなお、不透明で限定的な調査で済ませるというのなら、それは責任放棄に他なりません。
人が亡くなっているのです。
理事者の皆様、どうか想像してみてください。
もしも、ご自身の大切なご家族が、同じような土砂災害に巻き込まれたとしたら――今回のような調査体制によって導かれた結論に、本当に納得できるとおっしゃることができるでしょうか?
突然、大量の土砂が家に押し寄せ、逃げる間もなく下敷きになる。被害に遭われた方々が、どれほど恐ろしかったでしょうか、苦しかったでしょうか。
想像に難くありません。
明日の予定も、未来の計画も、私たちと同じようにたくさんあったであろう、日常を生きていた松山市民の方々です。
その命が奪われたという重さを思えば、今回、市が「管理に瑕疵なし」と判断したこの意思決定のプロセスは、到底、妥当であったとは言えないのではないでしょうか。
改めて、本市の判断プロセスに妥当性が欠けていると考える根拠を、整理して申し上げます。
わずか1名、一分野の専門家による意見聴取。
6ページにまとめられた簡略な記録。
1か月に満たない短期間での検証。
第三者委員会無しの結論。法学的・行政学的観点の欠如。
あらゆる分野の専門的知見の不在。そして、情報公開を経なければ確認できない不透明な調査過程。
改めて以上のような事柄を完備し、土砂災害の管理瑕疵責任の検証をやり直せば、よりよい営造物管理体制・事故調査体制のあり方が見えてくるはずです。
そしてこのことは再発防止にも繋がる極めて公益性の高い取り組みです。
しかし、現状本市の「管理瑕疵なし」という結論に至るプロセスには、その独立性や透明性、多角的視点を欠いている点、不備があると考えます。
そこでお尋ねします。
本市が「松山市に管理瑕疵責任なし」と判断した際の、意思決定プロセスを市は何を根拠に妥当だと考えられているのか、市の所見を伺います。
市の見解をお聞かせください。
[理事者答弁] 開発建築部長
今回の災害は、 大規模で発生メカニズムが複雑だったことから、災害が発生した原因を公平公正に解明し、再発防止に向けた検討を行うため、県が設置した技術検討委員会に市としても全面的に協力しました。
その後、委員会の報告書をもとに道路の設計や施工、城山の管理に関して、その分野の専門家にご意見を伺い、市として道路設計・施工の妥当性や管理状況から、公の営造物の通常有すべき安全性を欠いていたとは言えないと判断したもので、意思決定プロセスは適切であると考えています。
以上です。
1-2. この判断の前提として、本市が管理体制そのものを検証していない点の妥当性を問う。
[質問全文]
先ほどのご答弁では、「管理瑕疵なし」と判断するまでのプロセスは妥当だと考えているということでしたが、そこで次に伺いたいのは、その判断の前提となる「市の管理体制」についてです。
今回、その管理体制そのものが検証されていないという点に、大きな疑問を感じています。
この点を、改めて詳しくお尋ねします。
現在、市は「管理瑕疵なし」と判断した根拠として、松山城山体に付属する緊急車両用道路の設計・施工について、土木の専門家にヒアリングを行い、それで検証を終えたとしています。
しかし、これはあくまで構造物(ハード)の設計や施工が適切だったかどうかという、ごく一部分の検証にすぎません。
しかも、その「ハード面」の検証も、土木工学という一つの学問分野の視点に限られており、より広い専門的知見が活かされたとは言いがたいものなのは、先の質問で述べた通りです。
一方で、管理瑕疵責任を論ずる上で本来重要であるはずの、まさに「管理」の視点に目を向ける、そこは一切の調査検証がなされていないのです。
市の営造物である城山が、適切に管理されていたのかという点が、無視されているのです。
城山の管理については、素人目にも検証が必要だと思える点がいくつも存在しています。
まず、樹木管理計画の策定時期です。
この計画が整備されたのは、崩落のわずか1年前。災害リスクが以前から指摘されていた区域であるにもかかわらず、この策定時期に問題はなかったのか。
加えて、市民から「城山にヒビがある」との通報があったこと、さらに市自身が擁壁の傾きについて把握していたことも明らかになっています。
つまり、異常の兆候を複数把握していたにもかかわらず、それにどう対応したのか、どのような判断がなされたのか――その検証がまったく行われていないのです。
土砂災害のリスクをおさえるための樹木管理計画が適切に策定されていたか、またその計画に基づいて実際の管理が適切に行われていたか。
あるいは、道路の異常について市民から通報があった際に、迅速かつ的確に対応していたか。
こうした維持管理や対応体制=“ソフト面”の検証については、県の技術検討委員会は、無論一切の調査検証を行っていません。
同様に、市がヒアリングした専門家も、管理体制に言及した記録は一切ありません。
本来、国家賠償法の考え方に基づいて土砂災害を検証する際には、
① 構造や地盤に関する要素(ハード)
②維持管理や運用に関する要素(予防目線のソフト)
③通報や初動対応の在り方(発災時のソフト)
この3つの観点それぞれを独立して検証するのが基本です。
しかし、現在の松山市の判断は、「緊急車両用道路の設計・施工に問題がなかった」ことを根拠に、予防措置や発災時の対応にも問題がなかったと結論づけているように見えます。
これは明らかに、「一つが問題なければ、他も問題ないはずだ」という論理の飛躍――いわゆる“滑り坂論法”と呼ばれる詭弁にあたります。
いくら設計や施工が正しかったとしても、定期点検は実施されていたのか?排水や樹木の管理は行き届いていたのか?異常が確認された際に是正措置を取ったのか?住民からの通報にはどう対応したのか?こうした点が明らかになっていない現状で「管理に問題はなかった」と結論づけるのは、あまりにも早計です。
さらに言えば、検証対象が緊急車両道路という付帯工作物だけに限られていることも問題です。
山体そのものもまた、市が管理する営造物である以上、山体についても、構造と管理の両面から検証されるべきです。
私は管理体制そのものにこだわって、あえてこの点を質問で取り上げている理由をお伝えします。
管理体制を検証しなければ、今この瞬間の城山が安全かどうか、誰も保証できないからです。
検証もせずに、どうやって体制を正すのでしょうか。
今回の事故を二度と繰り返さないために、最も重要なのは、市の営造物、城山の管理そのものを根本から見直すことです。
それなくして、市民は安心して松山に住まうことはできず、信頼の回復もありません。
改めて問います。
構造的な設計や施工だけでなく、日常的な維持管理や市民からの通報への対応といったソフト面の検証が一切行われていない現状は、きわめて不十分であり、「管理瑕疵なし」とする判断の前提が成り立っているとは言いがたいと考えます。
また、検証対象が緊急車両道路のみに限定されていることも問題であり、山体全体を含めた管理体制の検証が必要があると思えます。
そこでお尋ねします。
本市が「管理瑕疵なし」と判断する前提として、市の管理体制そのものが検証されていない点について、何を根拠に、妥当であるとお考えか、見解を伺います。
[理事者答弁] 開発建築部長
城山の管理は、史跡松山城跡に関する保存活用計画や樹木管理計画を策定し、管理体制を整えています。
日常の点検で、道路や斜面に異常があれば必要な補修を行うほか、周辺家屋に支障がある樹木は伐採するなど、適宜維持管理を実施しており、本市の管理体制は適正だったと考えています。
また、再発防止に向けて、技術検討委員会の報告書を参考に、 巨木の存在、軟質な捨土の分布、降雨による水の流入などの調査を行うとともに、樹木管理計画などの見直しを行い、管理体制の充実を図ります。
以上です。
1-3. 国家賠償法において重要な予見可能性について、これまでの経緯や知見を踏まえた上で、本市が予測不能だったと判断した根拠と、その妥当性を問う。
[質問全文]
そもそも、公の営造物において事故が発生した場合、国家賠償法において特に重視されるのが「予見可能性」という観点です。
これは、「その事故は事前に予想できなかった?」「もし予想できたのであれば、未然に防ぐために対策を講じることができたのでは?」
という視点から、その営造物の管理者――すなわち市――に責任があったかどうかを問う、極めて基本的かつ重要な考え方です。
裏を返せば、予見可能だったにもかかわらず、必要な管理や措置を怠っていた場合は、「管理瑕疵」があったとされ、市には損害賠償責任が生じる可能性があります。
したがって、「予見可能だったかどうか」をしっかりと検証することは、市の責任の有無を明確にするうえで、避けて通れないのです。
3月議会での私の質問に、市は今回の災害を「複雑なメカニズムによって発生したから予見できなかった」とご答弁されました。
このご答弁は、予見不可能だったと説明できる根拠になるのでしょうか?
一般的に、土砂災害の素因は7つと言われています。
降雨、地質、地形、地下水、樹木の植生、地震・振動、人為的要因の7つです。
こうした素因があって発災すると認識される、土砂災害の基礎的な知識です。
市が管理する山や構造物においては、こうした素因をふまえて災害の可能性を予測し、防災対策を講じるのが当然の責務です。
今回、市が言う「複雑なメカニズム」とは、この7つのうち複数の要因が重なったということに過ぎません。
もし、隕石の直撃や未知の地質反応といった“新種の要因”による災害であれば、「予見不可能だった」との説明にも一定の説得力があるでしょう。
しかし、今回の災害は、あくまで知られた7要因のうち複数が関係して発生したものです。
しかも、国家賠償法の過去の判例では、たとえ複数の要因が関係していても、管理瑕疵が認められたケースが少なくありません。
今回の土砂災害の発災メカニズムは、技術検討委員会の報告書でもこの「7つの素因」に沿った形で分析がされています。
そして市は、これらが複雑に関係していたからこそ「予見できなかった」と主張していますが、私はむしろ逆ではないかと思っています。
というのも、城山にはこの7つすべての素因――雨、地質、地形、地下水、樹木の状況、人の手による構造物の影響など――がそろっており、元々土砂災害が起きやすい条件がすべて揃っていた場所なのです。
しかも、城山は市街地に近く、多くの市民が利用する場所です。
だからこそ、特に慎重に管理する必要があったはずです。
実際、過去にも同じような条件が重なって、愚陀仏庵が倒壊したり、登山道が崩れたりしています。
そうした過去の事例があるにもかかわらず、今回の災害だけを「複雑だったから予測できなかった」とするのは、やはり無理があるように感じます。
県の資料によれば、今回の土砂災害の要因は次のように整理されています。
大雨:72時間で約289mmの降雨により地盤が緩んだ。
もろい地質:風化した岩と捨て土が混ざり、崩れやすい。
地形:雨水が集まりやすく、すべり面ができやすい。
地下水:側溝の詰まりで水がたまりやすい。
木の影響:大きな木が荷重となり、地下水の流れも変える。
構造物:擁壁や舗装盛土が斜面の安定性を下げていた。
過去の異常:擁壁の傾き、ひび割れ、凹み、崩れなど、
複数の変状が以前から確認されていたこれだけリスクが重なっていたなら、むしろ「予見しやすかった災害」ではなかったでしょうか。
しかも、愚陀仏庵の倒壊や登山道の崩落など、過去にも似た災害が起きている山なのです。
なお、今回崩落した擁壁については、市が崩壊前から再工事を予定していたことが明らかになっています。
これは、擁壁そのものの構造的な脆弱性を市が認識していたことの裏付けであり、単なる補修ではなく、支持基盤まで達するような抜本的な再設計・再施工が計画されていたという点で、重大です。
つまり、市自身が「この擁壁のままでは持たない」と判断していたのです。
それほどの危険を把握していたにもかかわらず、結果として対策が間に合わず、崩落に至った――この事実を軽視することはできません。
それでもなお、「複雑だったから予見できなかった」という説明で済ませようとするなら、市の危機管理姿勢そのものが問われます。
今回の災害が予見できなかったという理由は「複雑なメカニズム」にあるとのことですが、それは7つの素因とは異なる新しい要因なのでしょうか。
そこでお尋ねします。
国家賠償法において重要な予見可能性について、これまでの経緯や知見を踏まえたうえで、何を根拠に、本市が「予見不可能だった」と判断したのかお示しください。
そしてその妥当性を、お聞かせください。
[理事者答弁] 開発建築部長
技術検討委員会の最終報告では、原因の特定には至りませんでしたが、緊急車両用道路が、斜面変形には影響を与えた可能性があるとされたものの、斜面崩壊に直接影響を与えた可能性は低いとされました。
そこで市としても、災害が発生した区域は、これまで同様の災害が発生していないこと、土砂災害警戒区域から除外されていること、災害の誘因とされる雨水は表流水だけでなく、通常把握することが困難な地下水が斜面の不安定化に関連したと想定されること、緊急車両用道路の付近は災害による大きな変状がみられないこと、また、道路から離れた場所が災害発生の起点となったと推定されていることなどから、本市が今回の災害を予見したり、その結果を回避することは不可能だったと考えたもので、その判断は妥当だと考えています。
以上です。
1-4. 発災後からこれまでの本市の住民対応が、本当に寄り添ったものであったと認識しているのかを問う。また、今後さらに寄り添った対応が必要と考えるが、その必要性について本市の所見を問う。
[質問全文]
土砂災害に関する最後の質問は、松山市のこれまでの住民対応、そして今後の姿勢について伺います。
とりわけ、被災された方々が今なお納得に至っていない現状に鑑み、市が示して態度は、本当に「住民に寄り添った対応」であったのか。
そして今後、どのように寄り添いながら信頼回復を図っていこうとしているのか。
また、住民の理解と納得を得るうえで重要となる判断根拠や資料について、市が自主的に開示しようとしない現在の姿勢は果たして妥当なのか。
情報公開の原則や公益性の観点から、改めて市の認識を問うものです。
先日、市民の方々から、城山土砂災害管理瑕疵に関する再調査を願う請願が出されました。
松山市への要望事項への回答は、3名の尊い命が奪われた事故当事者からの返信とは思えない、なんらご挨拶分もなく「令和7年5月20日付「松山市緑町における土砂災害に関する要望書」の要望事項について以下の通り回答させていただきます。」と、記されており、事故の重大性や被害者・遺族への配慮が一切見受けられません。
次いで、『1の回答。道路の設計・施工・管理の妥当性は、既に、専門家の意見を伺いながらしとして確認し、問題はなかったと判断していますので、あらためて調査する予定はありません。
検証資料・議事内容などの開示は可能ですので、情報公開請求の手続きをお願いします。』と、再調査の必要性を、にべもなく否定しています。
一定の定型的な表現や事務的な文体となるのは、行政文書としてやむを得ない面もあるのかもしれません。
しかし、それを踏まえたとしても、人の命が失われた事実に対して、あまりに事務的で冷淡な対応と言わざるを得ず、市民感情とかけ離れた姿勢が強く問われるものです。
命が失われた事故に対して、「問題はなかった」と淡々と書かれた文書を目にしたとき、どれだけの市民が「これは誠実な対応だ」と受け止められるでしょうか。
行政が何を大切にしているのか、その姿勢が言葉の端々に表れるからこそ、こうした文書ひとつが、市民との信頼関係を大きく左右するのです。
市の営造物が土砂災害を起こしたことで、生活にご不便をおかけする。
という低い姿勢で、既に生活再献金を支払ってきたにもかかわらず2月の住民説明会以降、まる人が変わったように強気で取りつく島もない、住民を軽視する市の態度の変節ぶりに、市民の皆様も驚くのではないでしょうか?
この回答を見たとたんに破り捨てた住民の方がいたと伺いました、そのお気持ちは、ごく自然な反応だと思いますし、多くの方が同じ思いを抱かれたのではないでしょうか。
また、市が「管理瑕疵なし」と判断するにあたり実施した専門家へのヒアリング資料についても、「請求があれば開示する」という消極的な姿勢で、あくまでも情報開示請求の手続きを踏まないと入手できない仕組みを担保しており、自主的に市民に公開しようとする動きは見られません。
県が積極的に資料を示し、説明責任を果たしている姿勢と比べると、松山市の対応はあまりに不十分であり、市民を軽視していると言わざるを得ません。
実際、被災したマンション住民が今年4月に実施したアンケート調査では、64名が回答し、「市の説明に納得した」「丁寧な説明に満足している」への回答は3件にとどまりました。一方で、「不服・不十分」との回答は87件に上り、「第三者を含めた再検証が必要」との回答が42件、「改めて説明会が必要」との声も34件寄せられています。
さらに、今後の取り組みとして「訴訟準備をしている」との回答も10件確認されており、市の対応に対する強い不満と不信が、明確に数字として表れています。
これはまさに、行政への信頼が大きく揺らいでいる証左であり、早急に誠実な説明と対応が求められている状況です。
情報公開の判断では、「出すことで得られる利益(=市民の理解や信頼)」と、「出さないことで守られるもの(=個人のプライバシーや混乱の回避など)」――この2つを比べて、どちらが大切かを考える必要があります。
市が公表していない資料は、どんな経緯で市がなぜ管理瑕疵なしと考えたか、を示す証拠資料であり、死亡事故・再発防止の観点で極めて公益に寄与するもので、市民の皆様に示しご理解をいただくための絶好の資料であります。
住民の皆様のご納得をいただくためにも積極的に公開することが住民と本市の利益に資するものであります。
しかし市は「請求があれば見せます」という対応をしています。
これは、市民に向けて積極的に公表するわけでもなく、かといって完全に非公開にするわけでもない、いわば「できるだけ出さずにすむ方法を選んだ」とも受け取れます。
市は、「資料を公表しないことで、何を守ろうとしたのか?」一方で、「資料を出すことで得られる、市民の理解や信頼」は、どれほど重く考えたのか?このバランスの中で、市は“どちらを重く見たのか”を、説明する必要があります。
そして、そうした大事な判断をしたのであれば、当然、庁内での会議や議論があったはずです。
そのとき、どんな話し合いがされ、どう結論が出されたのでしょうか。
もしも「プライバシー保護」が理由で出せなかったというのであれば、名前などを黒塗りにして出すこともできたはずです。
それでも出さなかったのは、もしかすると「出すことは、市にとって都合が悪い部分がある」のではと、市民に余計な疑念を抱かせ、場合によっては隠蔽を疑われても仕方がない対応だと感じます。
市が本当に市民に向き合う姿勢を持っているのか、情報を出すべきだった理由をどう考えていたのか――
ぜひ明確にお聞かせいただきたいと思います。
現在、熱海市では議会が100条委員会という強い調査権限を使って、土砂災害に関する管理責任があったのかどうかを徹底的に調べています。
こうした重大な事故では、それほどまでに情報公開の姿勢や、行政の判断がどれだけ透明に行われているかが重要だということです。
私は議員として、この問題がこれ以上、市民との無用な対立や争いに発展することなく、一刻も早く解決へ向かうことを心から願っています。
今回お伺いしたいのは、市として、今後こうした事態において市民との感情的な軋轢を生まないよう、丁寧に対応していく意思があるのかどうか、その一点に尽きます。
今回の件に関しても、もし市の説明が正しく、住民の理解が得られていないだけだとお考えであるならば、再度きちんと説明会を開くことで、疑念を晴らし、納得を得る努力をするのが本来あるべき行政の姿ではないでしょうか。
市はこれまでも、様々な議員からの住民への対応を問う質問に、「個別に丁寧に対応している」と繰り返し答弁していらっしゃいますが、実際に被災マンションの住民の方々が行ったアンケート結果を見ると、そう感じている人はほとんどいないのが現実です。
市の説明と、住民の受け止め方には、大きなズレがあります。
今、住民のみならず、松山市民から、松山市の市民に寄り添う姿勢が問われています。
とくに行政の信頼を支える根幹である「文書のつくり方・出し方」については、作成の段階から市民の感情に目を向け、市民の理解と納得に資する情報は、自ら積極的に公開していく姿勢が求められていると思います。
そのような姿勢をもって市政に臨むお考えがあるのか、そこでお尋ねします。
発災後からこれまでの本市の住民対応が、本当に「住民に寄り添った」ものであったと認識しているのかを問うとともに今後さらに寄り添った対応が必要と考えるが、その必要性についての本市の所見を、お聞かせください。
[理事者答弁] 開発建築部長
被災した方々が、できるだけ早く元の生活に戻れるよう、被害を受けた建物などを、原状に回復するための「生活再建金」の給付や、被災された方からのご質問やご要望について、その都度、各担当部局が個別に丁寧に対応してきました。
今後も引き続き、個別に丁寧な対応を継続していくほか、一日も早く、安全で安心できる環境を取り戻せるよう、本復旧工事を進めます。
さらに、工事期間中は、騒音や工事車両の通行などに、細心の注意をはらうほか、工事の進行状況を、ホームページでお知らせするなど、丁寧な対応に努めます。
以上です。
2. 政策方針変更時の情報共有について
時代の変化が速くなる中、今後増えると予見される政策の方針変更への対応として、丁寧な情報共有と説明責任の在り方について本市の認識を問う。
[質問全文]
近年、松山市が進める主要な政策において、方針転換や計画変更が見られます。
時代の変化が速くなる中、政策を柔軟に見直すことは必要であり、そのこと自体を否定するものではありません。
しかし一方で、こうした方針変更や見直しの際に、市民や関係者への説明のあり方や、情報共有のタイミング・手法に課題があると感じさせる場面がいくつか見受けられるため、今回は、3つの事例を挙げ、その問題点と今後のあり方について質問させていただきます。
この3つの事例には、共通して「説明不足」と「関係者への情報共有の遅れ」が見受けられます。
一つ目は、松山駅前車両基地跡地です。
松山市は平成27年に、松山駅前の車両基地跡地に文化ホールの整備をイメージさせる基本構想を策定し、その過程で関係者へのヒアリングも実施してきました。
この構想には、耐用年数が限界が近づき、近い将来閉館が予想される市民会館の代替機能としての役割も期待されていた経緯があります。
ところが昨年9月、突如アリーナ建設への方針転換が市長から発表され、多くの市民や関係者にとっては、まさに寝耳に水の発表でした。
とりわけ、文化ホール構想の実現を心待ちにしていた方々から、「松山から市民会館の代替機能を持つ文化ホールが失われてしまうのではないか」との強い不安の声が上がったのも、無理からぬことです。
私自身、アリーナ構想そのものを否定するものではありません。
文化ホールとアリーナは、どちらも都市の文化や交流を支える重要な施設であり、それぞれの目的や役割は異なります。
本来であれば、市民の声を聞き、両者の機能や将来性、経済合理性や必要性を、個別に丁寧に議論し、それぞれにふさわしい整備方針を検討すべきでした。
指摘したいのは、検討プロセスの順番そのものです。
こうした重大な方針転換を行うのであれば、本来であれば市長の発表よりも先に、文化関係者・スポーツ関係者・有識者・市民代表などを交えた検討委員会を立ち上げ、議論を尽くすべきでした。
ところが実際には、アリーナ構想の発表のあとに、検討委員会が設置されたため、「アリーナありきで話が進んでいる」と、関係者からも疑問や不満の声が多く上がる結果となりました。
文化ホールには音響や舞台設備など、音楽や演劇に適した専門的な空間が求められます。
一方でアリーナは、スポーツや大規模イベントなど、多目的に対応できる柔軟性と集客力が期待されます。
それぞれが代替不可能な役割を持つ以上、「文化か、スポーツか」といった二項対立になる議論になるような事態は、アリーナ建設の方針発表と検討会の順番を交通整理していれば、避けられたのではないでしょうか?
にもかかわらず、今回の方針転換では、適切な手順や十分な説明がなされないまま「アリーナ建設」という形で突然の公表がなされ、「文化ホールがアリーナに取って代わった」という“場所ありき”の印象を市民に与え、混乱や不信感を招いてしまったことは、非常に残念です。
予算規模や建設手法、運営形態などが明らかになっていない段階で、どちらか一方を選ぶような議論が先行してしまえば、冷静で成熟した合意形成を妨げることにもなりかねません。
このような重要な都市インフラの整備においては、「何をつくるか」だけでなく、「なぜつくるのか」「誰のためにつくるのか」「将来にわたってどう活用されるのか」といった視点を丁寧に市民と共有しながら、段階的に進めていくことが、今後ますます求められると考えます。
2点目は、松山駅再開発についてです。
当初は立体型で進められていた松山駅前バスタ計画は、現在は平面型に縮小されています。
しかしその理由や背景については、松山市からの発信よりも愛媛県側の発言を通じた報道のほうが市民に先に届いているような状況が見られ、市としての説明が十分であったとは言い難い状況です。
さらに今月、松山市が松山駅周辺の土地区画整理事業の完成時期を2026年度から2028年度に延期すると発表した件においても、「県が市の説明に反論」という見出しで大きく報道がなされ、市民の間に混乱が広がる結果となりました。
こうした事態は、担当部署だけでなく、市としての対外的な説明内容や責任分担について、事前に組織横断的な確認や合意形成がなされていたかが問われるものです。
特に、広域的な関係機関が関わるプロジェクトにおいては、リーダー層が関与し、戦略的に調整を図るとともに、進捗や背景を適切に公開しながら、合意形成を進めることが、結果としてスムーズな事業推進と市民の安心につながるのではないでしょうか。
大規模なインフラ事業では、変更や遅れが避けられない場合もあります。
だからこそ、関係機関と丁寧に連携し、情報を共有・調整した上で進めることが重要です。今回のような事態から、松山駅の今後に市民から不安の声が上がるのも、無理からぬことと思われます。
3点目は、愚陀仏庵の再建計画において、番町小学校の敷地内に建設する方針が示された件です。
この計画は、文化的・教育的意義の高いものであり、長年の懸案事項であった、正岡子規や夏目漱石ゆかりの愚陀仏庵の再建が、ようやく動き出したこと自体は、大変喜ばしいことだと受け止めています。しかしながら、その建設予定地が番町小学校の校庭であるにもかかわらず、保護者や地域住民に対する事前の丁寧な説明が不足していた点については、課題が残ったと言わざるを得ません。
実際に、「校庭が狭くなってしまうのではないか」「観光客が子どもたちの活動エリアに入ってくるのではないか」といった不安の声が保護者から上がるのは、当然のことだと考えます。
これは、施設そのものの価値や意義に反対しているというよりも、説明や合意形成が不十分なまま計画が進められたことに対する、至極真っ当な反応であったと受け止めるべきではないでしょうか。
特に、教育の現場に関わる施設整備においては、子どもたちの安全と教育環境の確保が最優先されるべきであり、その観点からも、早い段階から関係者と連携しながら計画を進めることが十分に可能だったはずです。
以上縷々申し述べましたが、改めて申し上げたいのは、こうした方針変更や事業の見直しこそ、丁寧な説明と誠実な情報共有が不可欠であるということです。
これからの時代は、社会の変化も速く、政策の転換や事業方針の見直しは、今後ますます増えていくことが予測されます。
だからこそ、ひとつひとつの判断に対し、その背景や理由をきちんと伝え、関係者との合意形成を積み重ねていく姿勢が、自治体への信頼を支える基盤となると考えます。
今後の市政運営においては、ぜひその点を強く意識し、市民とともに歩む行政となりますことが重要という観点から、お尋ねします。
時代の変化が速くなる中、今後増えると予見される政策の方針変更への対応として、丁寧な情報共有と説明責任の在り方について、市の認識を、お聞かせください。
[理事者答弁] 総合政策部長
本市は、市民との距離の近さを大切と考え、日頃から様々な声を政策に取り入れつつ、人口減少やデジタル化など社会情勢の変化や他の自治体の状況も踏まえ、 必要に応じて柔軟に対応するようにしています。
その際には、丁寧な情報共有と変更に至った説明責任を果たすことが重要だと考えていますので、引き続き、事業の近況や変更点などを市議会や関係者をはじめ、記者会見やホームページなどで説明してまいります。
以上です。
3. 稼ぐ地域づくりについて
・3-1. ふるさと納税において、過去に寄附額が大幅に増加した要因及び昨年度の伸び率の鈍化についての分析を踏まえ、今後さらなる寄附額増加に向けた本市の施策を問う。
・3-2. ふるさと納税寄附額増加に向け、「ふるさと納税 3.0」の導入について本市の考えを問う。
・3-3. 松山中央商店街に期待される役割や機能を、本市はどのように捉えているか。また、再生に向けた取組の進捗を問う。
3-1. ふるさと納税において、過去に寄附額が大幅に増加した要因及び昨年度の伸び率の鈍化についての分析を踏まえ、今後さらなる寄附額増加に向けた本市の施策を問う。
[質問全文]
松山市のふるさと納税寄附額は、令和3年度に約6億6千万円、令和4年度には約9億7千万円、そして令和5年度には18億6千万円と、わずか2年で約3倍にまで急増しました。
特に令和5年度は、前年度比で約1.9倍、約92%増という驚異的な伸びを記録。
全国平均の伸び率約16%と比べても、5倍以上の勢いで成長したことになります。
この急成長は、返礼品の工夫やプロモーション施策など、本市職員・委託事業者の不断の努力の成果であり、深く敬意を表したいと思います。
しかし一方で令和6年度の寄附額速報値は約24億6万円と、約6.4億円増加しているものの、伸び率は約32%にとどまりました。
全国平均伸び率と比べると依然上回っているものの、前年度の92%増と比較すると、 伸びが鈍化した状況がうかがえます。
全国で地域間競争が激化する中で、この“鈍化傾向”を一過性ととらえず、今後の戦略的見直しが必要なのではないか、そうした観点を持って、本日は質問させていただきます。
ふるさと納税は、単なる財源確保にとどまらず、・松山の魅力を全国に届ける“広報ツール”であり、地元企業の商品力やブランド力を高める“経済活性化のツール”であり、寄附者との新しい関係を生む“関係人口創出の窓口”でもあります。
さらに本制度を通じて、市内事業者がEコマースに挑戦する機会を得るとともに、商品の魅せ方やデジタル対応力を磨くことで、地域全体のDXの底上げにもつながる、そうした波及効果も大いに期待されています。
だからこそ、いまこのタイミングで、これまでの急成長の要因、そして今見えてきた伸び率鈍化の背景を丁寧に分析し、将来を見据えた戦略的な施策に本気で取り組むべきだと申し上げます。
そこでお尋ねします。
令和4年度・5年度において、本市のふるさと納税寄附額が急増した主な要因は何か。
また、令和6年度における伸び率鈍化の背景については、どのような分析を行っているか。
そのうえで、今後さらに寄附額を伸ばしていくために、どのような戦略的施策に取り組むのか、本市の見解を、お聞かせください。
[理事者答弁] 産業経済部長
まず、令和5年度の増加要因についてですが、産業経済部に業務を移管し、営業力を発揮しながら事業者との連携を深め、返礼品を約840品目追加したことや、認知度の高い3つのサイトの導入のほか、旅行需要の回復を見据え、宿泊クーポンのラインナップを充実させるなど、計画的に取組を進めたことが、多くの寄附につながったと考えています。
次に、令和6年度の伸び率等についてですが、新たにふるさと納税を始める方が減少するなど、市場が成熟し、全国的に伸び率は鈍化傾向です。
そのような中、本市では、寄附者のニーズを捉え、知恵と工夫で、事業者と返礼品開発を進め、バリエーション豊かな620品目を追加するなど、寄附額は、全国の伸び率を上回り、約6億円増加し、過去最高を更新しました。
今後は、観光地である強みを生かし、旅行・宿泊クーポンや体験型返礼品を充実させるとともに、楽天グループと連携し、全国的に先進的な取組の「松山ファンサイト」を立ち上げるなど、本市ならではの魅力を全国へ強力に発信することで、リピーターの獲得を推し進め、寄附額の増加につなげたいと考えています。
以上です。
3-2. ふるさと納税寄附額増加に向け、「ふるさと納税 3.0」の導入について本市の考えを問う。
[質問全文]
ふるさと納税3.0、この言葉をご存知でしょうか。
ふるさと納税を振り返りますと、単なる返礼品提供だったふるさと納税1.0から、自治体や事業者の活動そのものへの寄附をするふるさと納税2.0に続き、ふるさと3.0はともに創る「共創型」。
構想段階から地域と一緒に未来をつくる、新しいふるさと納税です。
「ふるさと納税3.0」とは、具体的には、ふるさと納税型クラウドファンディングの一種で、企業や個人事業主と自治体が連携してプロジェクトを立ち上げ、その構想や取り組みに共感する寄附者から、ふるさと納税の形で資金を募るというものです。
この「ふるさと納税3.0」は、ただの財源確保ではありません。
地域にもたらす価値が極めて多面的です。
たとえば、地元の事業者が新しい商品やサービスに挑戦する時、そのスタートの段階から寄附で応援できるのが特徴です。
また、「この想いに共感したから応援したい」という理念やストーリーに寄り添った寄附が集まることで、寄附者と地域の長いお付き合いが生まれます。
この点が、従来の「返礼品消費型モデル」とは異なる価値を生み出します。
さらに、事業者がプロジェクトを発信する過程でEコマースやデジタルに強くなるきっかけにもなり、市としても「今、松山で何が動いているか」を全国に伝える広報やブランディングの武器にもなります。
すでにこの仕組みを先駆けて導入し、成果を上げている自治体も出てきています。
たとえば、泉佐野市では、特産品に乏しいという課題を抱える中で「ふるさと納税3.0」の枠組みを活用し、2020年度に約5.5億円、2021年度には約20億円、2022年度には約44億円という規模の資金調達に成功しました。
2023年度には過去最多となる28件のふるさと納税3.0プロジェクトが展開されました。
その中でも、代表的な事例が「ヤッホーブルーイング」のブルワリー誘致です。
全国のクラフトビールファンから寄附を集め、総額10億円規模のプロジェクトとして始動し、2026年夏の開業を目指して着工。
年間7万人が泉佐野市に来ることを見込む地域資源として期待されいます。
また、高知県須崎市では、寄附を活用して水産加工第2工場の建設を実現しました。
地域の特産品である鰹やカンパチのブランド化に成功。
寄附額は約1億円規模に上り、これにより雇用創出や販路拡大など地域経済にも波及効果を生んでいます。
須崎市は、このふるさと納税3.0制度がなければ、寄附額も15億円程度が限界だったところ、この制度も活用で寄附額を20億程度増やしたと関係者から聞きおよんでおります。
同じ四国ですが、人口はわずか約1万8千人の自治体で、令和6年度約37億円の寄附を集めています。
ふるさと納税3.0は、クラウドファウンディング形式となることで、寄附対象が特定の事業者に限られることから、公平性の担保という観点では一定の留意が必要です。
しかし、あらかじめ公募や審査制度を整えた上で実施すれば、地域の産業振興に極めて有効な政策ツールとなり得ます。
かつては、「お米」「カニ」「お肉」などの強い返礼品がなければ、ふるさと納税では勝てないと言われてきました。
しかし今、状況は大きく変わりつつあります。
ふるさと納税3.0という新しい形が登場したことで、商品力に依存しなくても、地域の魅力や挑戦そのものに共感が集まる時代になったのです。
だからこそ、必要なのは「特産品」ではなく、柔軟な発想と、すばやく動く自治体の姿勢です。
この新たなスキームをいち早く導入し、地域の物語を届けた自治体こそが、これからのふるさと納税の主役になっていくはずです。
成功している他自治体を参考に、本市としても、「ふるさと納税3.0」の導入を検討すべきと考えます。
そこでお尋ねします。
松山市において、ふるさと納税3.0の仕組みを取り入れ、事業者とともに地域の新たな産品や価値を創出していくという新たな挑戦に取り組むお考えはないか、本市の見解をお聞かせください。
[理事者答弁]産業経済部長
「ふるさと納税 3.0」についてですが、全国で20弱の自治体が導入しており、事業者の新商品開発などを支援することで、産業の活性化と寄附額の増加につながる仕組みであると認識しています。
現在、本市では、市内経済の活性化に向け、ふるさと納税と観光や物産の振興を連携させた取組を重点的に推し進めていることから、「ふるさと納税 3.0」の導入については、先進事例を参考に、調査・研究したいと考えています。
以上です。
3-3. 松山中央商店街に期待される役割や機能を、本市はどのように捉えているか。また、再生に向けた取組の進捗を問う。の考えを問う。
[質問全文]
中央商店街――銀天街・大街道を中心とするこのエリアは、松山市の都市構造の「心臓部」、まさに“中央”という名にふさわしい場所です。
長年にわたり、市民の暮らし、経済、観光の中核を担ってきました。
しかし現在、その姿には、かつての賑わいからの大きな変化が見られます。
本市としても、空き店舗対策やローカル10000といった事業を通じて、一定の取り組みは継続されています。
これらは、民間投資の呼び水となり得る有意義な事業であると評価しています。
しかし一方で、現在の対応は、民間投資を“待つ”受け身の姿勢にとどまり、「点」での支援に終始しているのが実情です。
まち全体をどう再構築していくのかという視点に立った、戦略的な都市政策としての展望が見えにくいことが否めません。
実際に商店街を歩けば、その状況は明らかです。
増え続ける空き店舗、老朽化が進む建物、そして休憩できるスペースや公園のような公共空間の不足、さらには駐車場環境の課題も指摘されています。
市民の皆さんからの商店街の現状を不安視するお声が、私のもとにも数多く寄せられています。
過去、松山市の中央商店街への姿勢を問う私の議会質問に対するご答弁においては、「商店街側からのビジョンが示されるのを待っている」との説明もありました。
しかし、中央商店街は4つの商店街組合から成り立ち、それぞれ異なる課題を抱え、地権者の高齢化も進行しています。
また、かつての「土地の所有者=商店主」という構造から、現在は所有と経営が分離され、テナント型・チェーン店型への構造変化も起きています。
こうした合意形成のハードルが上がっている環境下においても“商店街からビジョンが上がるのを待つ”という姿勢では、変化のスピードに対応できず、再生のタイミングを逃すおそれがあります。
一方、松山ロープウェイ商店街や花園商店街では、市が主体となって明確なビジョンのもと再整備が進められ、成果を上げています。
これらは「市が主導した成功例」とも言えます。
にもかかわらず、より松山市に与える影響度の大きい「中央商店街」、銀天街・大街道を含む松山市の“心臓部”とも言えるこのエリアには、なぜ同様の積極的関与がなされてこなかったのか。
本来、商業、観光、交通の中心であり、再生のインパクトが最も大きい場所です。
にもかかわらず、現在の支援は「点」でとどまり、商店街任せ、民間投資待ちの姿勢が続いています。
この差は、公平性の観点からも疑問が残ります。
なぜ最重要拠点である中央商店街にこそ、市が先頭に立って「面的・戦略的支援」を展開しないのでしょうか。
特に重要なのは「今」というタイミングです。
市駅周辺整備は来年度に完成を迎え、市は駅前広場を中心とした新たな賑わいの創出を目指しています。
また「歩いて暮らせるまちづくり」を掲げる中で、その人の流れの多くは、自然と中央商店街、銀天街・大街道へと誘導されています。
だからこそ、この人の流れを受け止める中央商店街の再生は極めて重要であり、市全体のまちづくり戦略の中核に据えるべき課題ではないでしょうか。
市駅前整備が完成間近の「今」こそ、商店街再生に本腰を入れる好機です。
また、道後温泉やロープウェイ通りでは観光客が戻りつつあり、回遊施策と連動すれば、観光客の動線を中央商店街へと誘導できる可能性も高まっています。
今年度、観光コンテンツ造成事業もスタート予定で、施策を打つのは素晴らしいことですが、予算額600万円と、この事業をきっかけに中央商店街が再生するきっかけになるとは考えにくい内容です。
人流と都市構造の変化が同時多発的に進んでいる今こそが、中央商店街の機能を再定義し、再生へと動き出す絶好のチャンスです。
しかし現状が続ば、商店街の衰退は、火を見るより明らかです。
中央商店街が再生すれば、固定資産税などの税収増にもつながり、観光消費の拡大による経済波及効果も大いに期待できます。
にもかかわらず、「空き店舗が埋まるのを待つだけ」の受け身の支援では、民間投資を呼び込むことは難しく、再生の起爆剤とはなりません。
都市再生緊急整備地域に指定された今だからこそ、松山市全体の中における、中央商店街に求められている機能や役割を松山市が明確に示すべきです。
そしてそのエリアビジョンに基づき松山市が本気で商店街再生に力を入れる姿勢を見せないことには、民間も安心して大きな投資に踏み切ることはできません。
いま、中央商店街の再生に本気で取り組めるかどうかが、松山の中心市街地の未来を大きく左右すると言っても過言ではありません。
中央商店街が果たすべき役割や機能について、本市はどのように捉えているのか。
ロープウェイ通りや花園町のように「商店街ごとの都市機能の明確化」が再生の鍵になると考えますが、中央商店街についてはどのような再定義を行おうとしているのか、これまでの空き店舗対策や出店奨励金といった点の整備にとどまらず、都市再生緊急整備地域の指定をどう活かし、再開発や民間投資を呼び込むのか。
そこでお尋ねします。
中央商店街に期待される役割や機能を、本市はどのように捉えているか、また再生に向けた取り組みの進捗を、お聞かせください。
[理事者答弁]産業経済部長
まず、中央商店街の役割等についてですが、中央商店街は商業機能が集積しているほか、昨年9月に発表した中心市街地の将来像のなかで、暮らしと賑わいが共生し集客の核となるエリアなどに位置付けていることから、本市経済の発展や賑わい創出に向け、中心的な役割を担うと考えています。
次に、再生の取組についてですが、本市は、昨年12月、都市再生緊急整備地域に指定され、中央商店街の周辺には、複数のオフィスビルの整備が計画されるなど、民間投資の機運が高まっています。
そのような中、空き店舗対策では、中央商店街で既に10件の相談があり、出店準備が進んでいるほか、新たな投資を呼び込むため、ローカル10,000の活用を積極的に周知するとともに、建替えなどを検討する事業者と情報交換や協議を行っているところです。
さらに、インバウンド需要の更なる取り込みや集客コンテンツの造成も進めており、これらの取組をスピード感を持ち、推し進めることで、賑わいや回遊性を一層高め、中央商店街の活性化につなげたいと考えています。
以上です。
4. 松山市駅前広場の整備について
・4-1. 松山市駅前広場の整備について、市民の声をどのように集め、どのように反映してきたのか。また、進行中の工事においても、市民の声に柔軟に対応していくべきと考えるが、所見を問う。
・4-2. 松山市駅前広場の整備に伴う渋滞への現状認識と対応策について問う。
4-1. 松山市駅前広場の整備について、市民の声をどのように集め、どのように反映してきたのか。また、進行中の工事においても、市民の声に柔軟に対応していくべきと考えるが、所見を問う。
[質問全文]
松山の中心部、松山市駅の整備が、いよいよ来年秋に完成予定です。
松山市駅前の整備は、公共交通の乗り継ぎ利便性の向上と、にぎわいの創出を目的としており、「歩いて暮らせるまちづくり」の象徴となるよう、「歩行者優先と賑わいづくり」をコンセプトに進められていると伺っております。
これまで、関係者との協議会や市民ワークショップ、さらには社会実験などを通じて、市民や関係者の声を丁寧にすくい上げながら、計画が進められてきたことは、承知しておりますが、それでも市駅前の開発に関しては、設計に関して、関係者から疑問の声が上がっている点を、昨年12月議会、質問させていただきました。
導線設計、特に中央商店街側への人流の確保が不十分ではないかという点について指摘させていただきました。
市駅から銀天街・中央商店街に至るルートは、松山で最も人通りの多い通勤・通学動線であり、まちの経済と日常を支える大動脈ですが、整備の現状を見ると、人の流れは花園町側に偏っており、東側、つまり中央商店街方面へのアクセスは、通行量の一番多い部分の整備がカラー舗装のみにとどまり、銀天街のファサード整備も取り残されている点を見ても、十分に意識されていないように見受けられます。
この点については、現段階で取り上げても建設的ではありませんので、今回は、これからの完成に向けて、市駅前をより良い空間にするために、今できる工夫や改善の可能性に焦点を当てて、お伺いします。
整備が進み、空間の全体像が見え始めた今、現場を日常的に利用される市民の皆さまからは、さまざまなご意見やご要望が寄せられています。
代表的なものをいくつかご紹介いたします。
まず「完成図を見て広場がもっと広いと思っていたのに、実際には半分以上がバスロータリー。
歩行者ではなくバスのための開発に見える」というお声。
また高島屋でお買い物をされた後、タクシー乗り場が遠くなり、ご高齢の方にとって移動が負担になっているというお声。
「以前利用していた、まつちかタウンへ降りる階段やエスカレーターがなくなり、往来がしづらくなった」というご指摘「車で高島屋に行きづらくなった。
車での乗り降りがしにくくなった」という声。
「どこでタクシーに乗るかわからない」「どこで車を降りたらいいのかわからない」というお声。
「駅前の景観として、排気用の煙突がそのまま目立っていて残念」という声、などが代表的なものです。
こうした声の中には、すでに設計が固まり、構造的にすぐに変更することが難しいものもあります。
しかし、導線の見直しや案内表示の工夫、景観への配慮、補助的な設備の追加など、今後の整備の中で対応が可能な部分もあるように感じます。
再開発とは完成して終わりではなく、市民とともに仕上げていくプロセスであるべきだと考えます。
そこでお尋ねします。
松山市駅前再開発において、これまで市民の声をどのように集め、それを計画や設計にどのように反映してきたのか。
また、現在進行中の工事においても、今寄せられている市民の声に対し、柔軟に対応していく必要があると考えますが、本市の所見をお聞かせください。
[理事者答弁] 交通拠点整備担当部長
市駅前広場の整備では、学識経験者や交通事業者、福祉関係者などで組織する協議会をはじめ、ワークショップや社会実験でいただいた意見をもとに広場の機能や施設配置などを計画しました。
また、工事着手後も、市民や地元商店街からわかりやすい案内看板の設置や軌道と道路との交差部分にカラー舗装などの安全対策を望む声がありましたので、計画に反映することにしています。
今後も、ワークショップなどを通じて、幅広い意見に耳を傾けていきたいと考えています。
以上です。
4-2. 松山市駅前広場の整備に伴う渋滞への現状認識と対応策について問う。
[質問全文]
松山市駅前の再開発に関連して、現在、駅周辺で発生している交通渋滞の問題についてお伺いいたします。
市駅前では、広場の整備にともなって一般車両の進入を制限したことで、周辺の道路が混雑していて困っている、という声が市民の皆様から寄せられています。
私自身も、以前からこの件について担当課に問い合わせをしてきましたが、昨年の段階では「市として調べた結果、特に目立った渋滞は確認されていない」という返答でした。
しかしその後も、末広町通り、千舟町通り、中の川通りといった周辺道路の渋滞を訴える声は後を絶ちません。
私自身、永代町・銀天街・千舟町といった市駅周辺で日々活動しており、地域の方々と直接お話しする機会も多いため、こうした渋滞に関する声の切実さは、現場にいる者としてひしひしと感じています。
そこで改めて、今年度あらためて市に確認を行ったところ、「最近の調査では一部に渋滞が見られるが、整備前と比べて顕著な差はない」との回答でした。
しかし、実際に生活する市民の実感とは明らかに乖離がある、というのが率直な印象です。
この渋滞の問題は、単に、渋滞で困っている人がいる、ということにとどまらない、実は街づくりの根本にかかわる重大なことなのです。
そもそも市駅前周辺はもともと昼間人口が非常に多く、土日ともなれば周辺駐車場はほぼ満車という状況です。
かねてより車で中心市街地に訪れていた方が多いこの場所において、中心部で車の通行を制限すれば、渋滞が起こるのは、ある意味当然のこととも言えます。
だからこそ今、あらためて本質に立ち返る必要があります。
市駅前整備のコンセプトは、「歩いて暮らせるまちづくり」。
これは、世界的にも、トレンドの街づくりの方向性です。
環境面への配慮など、非常に意義あるもので、これを否定するものではありません。
たとえばスペイン・バルセロナでは、“スーパーブロック”という概念のもと、都市全体を再編し、歩行者と公共交通の空間を大胆に設計しています。
それを支えているのが、地下鉄・バス・トラム・国鉄などによる強力な公共交通ネットワークであり、深夜まで運行されることで、車がなくても不便のない暮らしが実現しています。
さらに、脱クルマ社会へのインセンティブとして、「ガソリン車やディーゼル車を廃棄すれば、公共交通が3年間無料になる」といった制度も導入されています。
もちろん、シェアサイクルの推進も、積極的に行われています。
こうしたまちづくりは、単に車を道路から締め出すのではなく、人々の行動を無理なく変えていく環境を丁寧に整備していることが特徴です。
一方で、松山市駅前を見ると、再開発は“点”にとどまっており、都市全体の構造と連動していない印象があります。
たとえば、松山市として導入したシェアサイクルのポートが、市駅前広場の中に設置されていないという事実は、歩いて暮らせるまちづくりに沿った開発になっているか疑問視される、象徴的な事案で、正直なところ驚きを禁じ得ません。
車での来街を制限するのであれば、それと同時に「公共交通で来てもらうための仕掛け」や、「乗り換えやすさ」などをセットで整える必要があるのです。
現時点では「車を締め出す」ことが先行し、代替手段の提示が不十分なままではないかと感じています。
このままでは、車で来ていた方々が不便を感じ、「もう行かない」と判断し、車で行きやすい郊外の大型店へと流れてしまう事態になりかねません。
そうなれば、歩いて暮らせるまちを目指した整備が、逆に中心市街地の空洞化を招くという最悪の結果になりかねません。
以上のような観点から、渋滞緩和につながるまちづくりを考える必要がありますが、そのうえで、現場レベルで改善できることにも目を向ける必要があります。
たとえば、千舟町通りから市駅前にバスが進入する際、バス乗り場に進入するための右折レーンがあります。
左端の車線から中央寄りの2車線をまたいで右折する箇所があります。
の右折レーンポイントは距離が短く、特に交通量の多い時間帯にはバスの進入が難しくなり、それによって同じルートで千舟町通りから市駅前に進入しようとする一般車が目詰まりを起こして渋滞を起こしている状況が見られるなど、後続車を含めた交通全体の流れに影響を及ぼしているように見受けられます。
こうした箇所については、信号時間の調整や交通制御の工夫など、警察との連携によって実現可能な改善策もあるのではないかと考えます。
そして、やはり最後に申し上げたいのは、人々のライフスタイルそのものを「車中心」から「公共交通と歩行」に移行させるには、それを促すまちづくりを本気で進めなければならないということです。
人は、単に車での通行を止められただけでは歩きません。
「歩こう」と思える環境、仕掛け、導線があってはじめて、行動は変わっていきます。
だからこそ今、「すでに起こっている渋滞に対して今すぐできること」と、
「“歩いて暮らせるまち”を目指すなら、先回りして整えるべきこと」。
この両方を同時に考える必要があります。
市駅前は、まさにそのモデルになるべき場所だと私は考えます。
そこでお尋ねします。
市駅前再開発に伴う渋滞への現状認識と対応策について、本市のご所見をお聞かせください。
[理事者答弁] 交通拠点整備担当部長
市駅周辺では、整備以前と同様に一部の道路で、朝夕の通勤時や近隣でのイベント開催時など、時間帯によって車列が延びる状況と認識しています。
現地での確認は、昨年の通行ルールを変更した前後に交通量調査を行うとともに、ルール変更から約1年後にあたり、近隣のイベントも開催されていた今月に、ビデオ撮影を含めた交通量調査を実施したところです。
今後は、これらの調査結果を分析し、警察やイベント主催者など関係者と協議を行い、ハード、ソフトの両面から必要な対策を検討していきたいと考えています。
以上です。
5. ブランド戦略について
松山市都市ブランド戦略の策定後、市民を巻き込んだ具体的な展開とブランドスローガン、ロゴの周知及び活用策について問う。
[質問全文]
本市では令和6年度、「幸せになろう。」という松山市のスローガンとロゴが発表されました。
私は以前の議会でも、今回のスローガンやロゴに関して質問をさせていただきました。
こうした制作物に賛否があるのは自然なことですが、今回のロゴとスローガンに関しては、実際に新聞やSNS、ブログなどでも、疑問や戸惑いの声が一定程度見られたことは事実として受け止める必要があると思います。
スローガンについては、「今、幸せじゃないってこと?」、「婚活のキャッチコピーのように聞こえる」、「行政が市民に一方的に呼びかけている感じがする」
といった市民からの反応がありました。
そして、ロゴについても、疑問の声が市民の間で上がっています。
選ばれた椿をモチーフにしたロゴが、実は同じ制作会社によって、過去に住宅団体向けに納品されたロゴとほぼ同じであるとの指摘の声が上がっています。
市は、「七宝柄は昔からある文様なので問題ない」としていますが、逆に言えば、それだけ誰でも使える“ありふれたデザイン”を、松山市の顔として掲げたのか?という疑問が拭えません。
市の個性や誇りを表すロゴが、どこかで見たようなもの、他でも使われていたようなものだとしたら、市民としては拍子抜けしてしまいますし、「これでいいのか」というお声が聞こえてくる現状も、当然のことではないでしょうか。
ロゴは市民投票によって選ばれたものですが、そもそも三案の選択肢の中に、他団体と酷似しているとの指摘があるデザインが含まれていたこと自体、極めて問題です。
市民参加と銘打つのであれば、ロゴの制作段階から市民の案を公募するなど、真の意味での参加型プロセスが必要だったのではないでしょうか。
一見すると「市民参加」の形式を取っているように見えても、実際には限られた選択肢から選ぶだけでは、市民を巻き込んだプロセスとは言えません。
今回のロゴ選定は「市民投票」という手順を踏んではいるものの、選択肢が限られており、市民の創意や意見が十分に反映される機会はほとんどありませんでした。
そのため、「市民参画が行われた」というよりも、「市民参画という手順を踏んだ」にすぎないという印象を持たれても、やむを得ないのではないでしょうか。
真に市民と共にブランドを育てていく姿勢が求められる中で、プロセスの段階から開かれた形で意見を募るなど、市民の思いをより積極的に活かせる仕組みづくりが、今後こそ必要だと考えます。
とはいえロゴとスローガンはすでに決定されたものであり、今さら変えるものではありません。
だからこそ、今後同様の発注を行う際には、今回の経緯や市民からの声をしっかり振り返り、参考にしていただきたいと思います。
そして、スローガンやロゴは、作ること自体が目的ではなく、市民に愛され、実際に使われてこそ意味がある」ものでございます。
大切なのは、このロゴとスローガンをどう活用し、市民に親しまれ、誇りを持って使ってもらえるものに育てていくか、松山市にプラスになるブランディングにつなげていくか、という点です。
このブランドスローガンとロゴの周知と市民を巻き込むための施策に目を向けると、15秒のショートPR動画の政策が挙げられています。
松山市では複数のPR動画をYouTubeで公開していますが、2024年2月に公開された動画は、6月18日時点で、再生回数が最も多いもので、3,834回、少ないものでは600回未満と、全体的に伸び悩んでいる状況です。
YouTubeという拡散性の高いプラットフォームにおいては、これは決して多い数字とは言えず、市のブランド戦略を効果的に伝えるツールとして、十分に機能しているのか、検証が必要です。
他都市では、たとえば岐阜県瑞浪市(みずなみし)のPR動画「奇跡の化石」は300万回再生を超えており、また福岡県北九州市「COME ON!関門!」は2億回再生を突破しています。いずれも、圧倒的な視覚インパクト、話題性、そしてストーリー性を兼ね備えた構成で、市民が自発的にシェアしたくなる、そんな“拡がる動画”になり、Youtubeというメディアを意識できていることが共通点です。
そうした事例と比較して現状を見ると、松山市のPRは、まだ共感や関心を引き出す広報戦略として十分に機能しているとは言い難い面があります。
だからこそ、今後はさらに市民の声を丁寧に取り入れ、効果を検証しながら改善を重ねていくことが重要です。
ロゴやスローガン、そしてそれを活用した広報展開が、市民にどう受け止められているか、その視点こそが、今後のブランド戦略の成否を左右する鍵になるのではないでしょうか。
幸い、本年度からは「都市ブランド推進業務委託」という新たな形で、デジタル広告や市内イベント、首都圏PRなど、このブランド戦略を推進するための、広範なプロモーションが計画されています。
この委託業務では、ブランディングサイトの活用、「まつやま幸せ100」の発信、そして各種ツール制作などが想定されており、これまで以上に「市民参加型」で育てるブランディングが実現されることが期待されます。
都市ブランド戦略策定と推進業務委託を合わせて約3,000万円に上る予算額の事業であることを踏まえると、それに見合った成果を求めていくことも、当然の視点ではないでしょうか。
そこでお尋ねします。
本市ブランド戦略の策定後、市民を巻き込んだ具体的な展開と市民参加型のブランドスローガン・ロゴの周知・活用策について、市のお考えを、お聞かせください。
[理事者答弁] 総合政策部長
第2期都市ブランド戦略の策定にあわせ、市民が出演する「幸せになろう。」の PR動画を、テレビやホームページなどで発信したり、市民が感じる幸せを広報番組の終盤に紹介しています。
今後も、市民の参画をいただきながら「幸せ」をテーマにした言葉を募集するほか、イベントや広報紙などで松山で感じる幸せを紹介する予定です。
また、ロゴの活用策などについては、職員の名札と名刺や市の広報物などに掲載するほか、企業や団体などにもロゴの利用を広く呼び掛けるなど、官民が連携しながらブランドスローガンやロゴの周知・活用に取り組んでいます。
以上です。
6. SNSでの情報発信について
本市が新たにスタートした、20 代への情報発信を目的とするインスタグラムの運用業務について、その進捗と成果を踏まえた今後の取組方針について問う。
[質問全文]
本年度、松山市では「20代に松山の魅力が刺さるインスタグラムの運用業務委託」が行われ、その結果、既存の「暖暖松山」アカウントがリニューアルされ、『マツヤマデイズ』という名称で、若年層向けの情報発信が新たにスタートしました。
県外流出が顕著な若い世代に、松山の魅力をしっかり伝えようとするこの取り組みは、非常に意義深いものですし、何より、若者が日常的に使うInstagramというメディアを選んだ点も、成果が期待できる取組と感じております。
4月23日のリニューアル以降、およそ2か月の間に、フィード投稿13回、リール18回、ストーリー22回の更新が行われています。
投稿内容は、一人の女性が自身の視点で松山の魅力を語るという、感性を活かした工夫ある構成で継続されています。
閲覧数については、1万回に届かない投稿が多い中で、ひとつの投稿が8.7万回の閲覧を記録し、いわゆる“バズ”が起こった例もありました。
これは、職員の皆様や委託事業者の皆様のご尽力の成果と受け止めています。
ただし、フォロワー数の増加は約625人にとどまっており、数値だけを見るとやや伸び悩んでいる印象を受けるかもしれません。
もっとも、SNSという媒体は、どの投稿がバズるか、どんな形で成果が表れるかを事前に予測するのが難しい特性を持っています。
したがって、私の目的は単に「数値の伸び」を取り上げて批判することではありません。
私が重視したいのは、このアカウントがSNS運用において最も重要な“運用目的”にしっかりと沿う、閲覧者の行動につながる設計がなされているかどうかという点です。
今回の委託業務は、旧「暖暖松山」アカウントでフォロワーの約7割が35歳以上を占めていたこと、またフリーペーパーとの内容の差別化が不十分だったことなどを課題としてスタートしています。
そのうえで仕様書では、インスタグラムを通じて10代後半から20代の女性に松山の魅力を届け、「行ってみたい」「住んでみたい」と思ってもらい、最終的には「この街でおばあちゃんになりたい」と感じてもらえるような発信を目的とされています。
また、ターゲットとなる人物像(ペルソナ)も明確に設定されており、市内の19歳の女子学生に対しては、地元への愛着を高め地元就職につなげること、県外の25歳の社会人女性に対しては、転職を機に松山への移住を促すことが想定されています。
このように、この事業は、運用目的やKPIやターゲットが仕様書の中でしっかり設計されている点は、非常に評価できると感じています。
だからこそ、実際の運用において、閲覧者を増やすことだけを目的にすることなく、何らかの行動につながる導線づくりが欠かせません。
たとえば、オフ会と言われルアカウントのファンのイベントや、地元への愛着を育むコンテンツ、市内企業や店舗との連携、移住・就職につながるリアルイベント実際の体験や相談への導線設計など、デジタルとリアルを結ぶ視点での運用が今後ますます求められます。
なお、今回の委託業務については、提案限度額2,850万円の事業で、運用期間は令和7年度から令和9年度までの3年間です。
単純計算にはなりますが、毎月約80万円近い委託費用でInstagramを運営するのですから、掲げた目的に沿って、成果へと確実につなげていくことが必要です。
フォロワーの伸び悩みも、現時点の課題としてしっかり受け止めたうえで、今後は、閲覧者の行動につながる設計を委託事業者とともに検討し、実装していく取り組みが求められます。
そのためにも、改善に向けた工夫や、さまざまな新たなチャレンジを重ねていくことが、より一層重要になるのではないでしょうか。
そこでお尋ねします。
松山市が新たにスタートした、20代への情報発信を目的とするインスタグラム運用業務について、その進捗と成果を踏まえ、今後どのようにこのアカウントから行動につなげるか、取組方針について、お聞かせください。
[理事者答弁] 市長
Instagram「マツヤマデイズ」は、転勤で松山に来た25歳の女性の視点から本市の魅力を同世代の若者に向けて発信しています。
具体的には、概ね週5回、閲覧が増える夕方以降に松山市の観光やグルメ情報と暮らしやすさなどを配信し、視聴者が興味を持ち行動に移すきっかけを作っています。
配信後は、視聴数や保存率などを分析し、効果的に配信した結果、メインターゲットの35歳未満のフォロワー数が約2倍半に増え、再生数が8万回を超える投稿も生まれるなど、好調なスタートが切れました。
引き続き、若者が「行ってみたい」「住んでみたい」と思う本市の魅力を発信していきます。
以上です。
質問要旨
1. 城山の土砂災害について
2. 政策方針変更時の情報共有について
3. 稼ぐ地域づくりについて
4. 松山市駅前広場の整備について
5. ブランド戦略について
6. SNSでの情報発信について